ドクターヘリとは
ドクターヘリはアメリカとドイツを中心に1970年前後より発達した、ヘリコプターを用いた救急システムを我が国が取入れたものです。
1995年(平成7年)1月17日阪神淡路大震災が起こりました。死者6,000人強、負傷者40,000人強の大災害でした。この中で多くの「防ぎ得た外傷死」が発生したとされ、これを契機に我が国災害医療は一大転換点を迎えます。当時すでに我が国には多数のヘリコプターが配備されておりましたが、救急医療に用いられたのは震災当日にわずか1件。3日間に17人がヘリコプターで救急搬送されたにすぎませんでした。
この反省に立ち、我が国のヘリコプター救急医療が推進されることになります。
1999年(平成11年)当時の厚生省による「ドクターヘリ試行的事業」が開始され、岡山県川崎医科大学附属病院高度救命救急センター、神奈川県東海大学医学部附属病院救急センターでドクターヘリが試験的に運用開始となります。この結果救急医療における死亡、障害の減少が期待される結果となりドクターヘリの導入は全国各地で行われるようになり現在に至ります。
信州ドクターヘリ松本
長野県は信州ドクターヘリ松本・佐久と2機体制でドクターヘリを運用しています。効率の良い運航のため県内を2つに分けて活動し、それぞれの活動状況に応じて相互補完しています。
信州ドクターヘリ松本は2011年(平成23年)10月1日に運航を開始し、年間450件程度の出動があります。佐久機・松本機の2機態勢となったことで重複要請や天候不良などにより出動できなかった事案(年間100件前後)が大幅に減少いたしました。
信州ドクターヘリ松本
活動エリア | 中南信 |
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基地病院 | 信州大学医学部附属病院 |
信州ドクターヘリ佐久
活動エリア | 東北信 |
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基地病院 | 佐久医療センター |
信州大学医学部附属病院屋上ヘリポートからのフライト時間。およそ30分で県内全域をカバーできます。
ドクターヘリ運用の流れ
信州ドクターヘリは長野県内の消防本部からの要請で出動します。
県民の皆様が直接ドクターヘリを要請することはできません。- 傷病者発生 119番通報(消防本部につながります)
- 消防本部でドクターヘリが必要か判断(キーワード方式)
- 必要と判断した場合、信州ドクターヘリ松本通信室(CS)にホットラインでヘリ要請
- CSで情報確認、同時にフライトドクター・ナースは出動(要請から3~4分で屋上ヘリポート離陸します)
小児集中治療の早期介入のためのドクターヘリの運用
2013年(平成25年)9月より新生児施設間搬送(信大病院NICU医師同乗)
2014年(平成26年)2月より重症小児転院搬送(県立こども病院医師同乗)
県立こども病院、当院NICUと協力し開始いたしました。
新生児施設間搬送
重篤な新生児疾患へ対応できる施設が限られているため、保育器含め特別な資機材をドクターヘリ(松本機のみ対応)に搭載、また、救急医のみでの対応は困難なことから当院NICU医師が同乗し施設間搬送を行います。すでに長野県立こども病院ドクターカーにより連絡搬送体制は整っているため、迅速な対応を考慮した出動となります。
重症小児転院搬送
信州ドクターヘリ松本が、県立こども病院に来た施設間搬送依頼に対応し、県立こども病院医師をピックアップして搬送元病院へ飛行。安定化後、状態により、ドクターヘリもしくは同時出動するこども病院ドクターカーで患児を搬送します。
実績
2015年(平成27年)9月~2021年(令和3年)3月
新生児搬送 20件
重症小児転院搬送 16件
機体説明
使用機体:EC135P2+
ユーロコプター EC 135 (Eurocopter EC 135) はユーロコプター社(欧州航空宇宙防衛会社EADSの子会社)が生産する双発の汎用ヘリコプターです。
高い安全性、最新技術を結集した高性能、環境に配慮した低騒音・低振動設計、使いやすいキャビン、高い稼働率と高い整備性による優れたコストパフォーマンス等の特長により報道、救急医療、警察、社用・旅客用、操縦訓練用等の各種用途で使用されています。
General characteristics:基本仕様
搭乗員 Crew | 機長 pilot×1 |
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乗員 Capacity |
最大7人 up to seven passengers ドクターヘリ仕様の場合:運航要員2名(機長、整備)、 医療要員2名(医師、看護師)、患者1名、付添1名の最大計6名 |
長さ | 12.16m(39 ft 11 in) |
高さ | 3.51m(11 ft 6 in) |
空虚重量 | 1,455kg(3,208 lb) |
最大離陸重量 | 2,910kg(6,415 lb) |
エンジン | 2×Pratt & Whitney Canada PW206B turboshaft engines rated at 498 kW(668 hp) |
Main rotor diameter | 10.2m(33 ft 6 in) |
Main rotor area | 81.7m2(879 sq ft) |
Performance:性能
巡航速度 | 254km/h(158 mph; 137 kn) |
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超過禁止速度 | 287km/h(178 mph; 155 kn) |
航続距離 | 635km(395 mi; 343 nmi) |
最大上昇高度 | 6,096m(20,000 ft) |
上昇率 | 7.62m/s(1,500 ft/min) |